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有機栽培いちごあまおう 「有機栽培は我慢」

生産者さんを訪ねて

2012年6月24日。園田農園をあとにして、福岡県入江農園へ。

園田農園訪問記はこちらをご覧ください。

園田さんと入江さんは同じ有機野菜を育てる仲間としてお知り合いでした。有機農業がつなぐ縁は県を超えてつながります。すばらしいですね。

園田農園から筑後川を超え、再び福岡県に入り入江農園へ到着しました。

福岡で有機栽培であまおうを育てるいちご農家入江さんは、認証を受けた正真正銘のJAS有機のいちごを栽培されています。

イチゴは苗が半作

訪問したのは6月。いちごの収穫が終わって2ヶ月が経っています。私はいちごつくりで忙しいのは収穫の時期だけだと思い、6月は比較的時間がおありになられるかと思っていましたが、いちごつくりは休める時期がないそうです。
いちごの実がつくのは今年新しく延びてきた株だけで、去年の株には実がつかない。このため「株」つまり苗を育てる作業が必要になります。

イチゴ農家では「イチゴは苗が半作」という言葉が良く聞かれます。これはつまり、イチゴの栽培は苗作りがうまく行けば、その作は半分終わったようなものという意味。それだけいちごの苗つくりは難しくて長丁場。この時期の苗つくりが成功するかどうかが決まるそうです。

ランナーから苗を育てます。

収穫が終わって畑から移動した親株を別のハウスに移動させ、大切に育てると株元から細長い茎のようなものがでてきます。その先に小さな株がつきます。

親株と子株をつなぐ細い茎が「ランナー」です。親株から出たランナーを切り離し、培地にさし芽をして苗を作って育てます。

上の画像は入江さんのハウス。(2012年6月24日)手入れしなくて雑草が生えているのではありません。
ことし実った親株から、来年の苗、こかぶを育てているのです。黒いのがポット。親株から出たライナーを導いて育ています。ハウスの中に草があり、虫がいてバランスが取れている。その様子が伝わってきます。

それでも化学物質は使わない

有機栽培でいちごの苗を育てると、この子株を育てるときにも化学肥料を使うことが出来ず、なかなか大きくならないのが悩みだそうです。

今の有機栽培の法律では、化学肥料を使って育てた苗を買って来ていちごを育てるのはOK。でも、自分の有機圃場の中で苗を栽培するときは化学肥料を使用してはいけないそうです。

分かりやすい例でお話しするとこのようになります。

市販の苗を購入して育てることも出来るし、他に畑を借りてそこで必要な分ほんの少し化学肥料を使って子株を育て移植した後、農薬も化学肥料も使わずに育てる事も出来る。この2つの方法の苗の育て方は、栽培期間中に化学物質を使っていないし、法律違反でもない。でも私達はそれをしない。

 

入江さんは化学物質を使わずにいちごを育てる理由をこんな風にお話ししてくださいました。

有機栽培いちごの苗はゆっくりしか大きくなれない。

でも、何も使わなくても、自然の力だけでこんなに美味しいいちごが出来るら。
本当の、本物の有機栽培のいちごがあることを知ってほしい。

実ったいちごの全部が私達のものじゃない ハウスの中の生き物みんなの分。

ハウスの中はバランスが取れている。害虫が出てきたら必ずその虫を食べる益虫がやってきて虫を食べてくれる。

アブラムシが発生していちごが食べられてしまう。農薬を撒けばアブラムシは死ぬ。でもまた次の害虫が来る。薬が効かないアブラムシが発生する。アブラムシが出てしばらくすると必ずてんとう虫が来てアブラムシを食べてくれる。いちごがアブラムシに食べられるのをじっと見て我慢する。

ハウスで実ったいちご全部が私達のものじゃない アブラムシの取り分もある。そう思ってじっと我慢するの、ハウスの生き物みんなのものだから。

有機農業は我慢の農業です。

そう笑うお二人です。

苗作りの課題は残り二つ

親株から子株を育てるときと、いちごの収穫の最後に来る虫を何とかすること。この2つが課題。

この二つを何とかできれば完成なんだけどな、とご自身の有機栽培を語られる入江さんご夫婦でした。

いちごが実っていない時期でも工夫を重ね、改良を重ねおいしいいちごを育てる入江さんご夫婦。今年もおいしいJAS有機栽培のいちごを楽しみにお待ち下さい。

 

有機野菜のぶどうの木 高橋和子

入江農園を初めて訪問した時の様子はこちらです。どうぞ合わせてご覧ください。