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有機野菜と虫の関係

有機農業と有機野菜

有機野菜を購入したときに、時折見かけることがある「虫」。できれば虫がいないほうがいいのですが完全になくすことは難しいのが現状です。この記事では、有機栽培と虫の関係について、虫がいる理由について、虫の発生を防ぐ工夫について、生き物の命の共存について解説し、虫の混入についてご理解を深めていただきたいと思っています。

野菜に虫がついている理由

「虫がいて 気持ち悪いんですけど~」
「届いたやさいに虫がいて 動いているんです。気持ち悪いです。我慢できません。」

お客様からこのような声をいただくことがあります。私は野菜に虫がいるのは仕方ないとは思いながら、虫がキッチンに入って来ることには抵抗がありますし、野菜についた虫を殺すのにためらいがあります。お気持ちよくわかります。

しかし、有機野菜に虫がつくのは、化学的な農薬を使用していないからこそ起こる自然な現象。有機農業では、害虫だけを選んで駆除するような強力な化学農薬を使いません。その代わりに、自然界にある天敵生物や、栽培環境そのものを工夫することで害虫の発生を抑えています。このため、有機野菜には、時折目に見える虫やその痕跡が残ることがあります。

また、収穫後梱包された野菜の中は、害虫にとって「天国」のような環境になりことがあります。収穫後、周囲には害虫を食べる天敵がいなくなり、残された卵が孵化して幼虫が成長することがあるからです。この現象は特に夏場に多く見られ、害虫が活動的になる季節ならではの課題です。

虫がついているということは、有機野菜が農薬に頼らず育てられた証拠でもあります。どうぞご理解ください。下の写真は岡山県の有機畑で撮影した、虫に食べられてしまったキャベツの様子です。ここまで被害がひどいと出荷できません。

虫に食べられてしまったキャベツ。ここまで被害がひどいと出荷できません。

虫の発生を防ぐ工夫

有機栽培を実践する農家さんは、虫の発生を最小限に抑えるためにさまざまな工夫をしています。手間がかかりますが、安全で美味しい野菜をお届けするために欠かせない取り組みです。

1. 野菜の検品と手作業での虫除去

出荷前には、野菜を一つひとつ丁寧に検品し、目に見える虫を取り除いています。この作業は非常に時間がかかり、人手も必要ですが、有機野菜ならではの品質を保つために欠かせないプロセスです。農家さんやスタッフが目視で確認し、細かな部分にまで注意を払うことで、できるだけ虫が混入しないよう努めています。

また、物理的な方法も使われています。これは虫がメロンを食べないようにメロンの近くに粘着性のテープを置き、物理的に虫を駆除します。(兵庫県の有機メロン畑で撮影)

2. 自然の天敵を利用

有機農業では、害虫の天敵となる生物を活用することがあります。例えば、てんとう虫やクモは、アブラムシなどの害虫を食べてくれる益虫です。こうした益虫を畑に呼び込むために、多様な植生を取り入れる工夫を行う農家もいます。(福岡県の有機いちご畑で撮影)

アブラムシを食べるテントウムシ

3. 栽培環境の工夫

さらに、農家さんは害虫が発生しにくい環境づくりにも力を入れています。輪作(異なる作物を順番に栽培する方法)や、害虫が嫌がる植物を近くに植える混植などを取り入れることで、自然の力を最大限に活用しています。また、適切な水分管理や通気性の確保により、害虫が繁殖しにくい環境を整えています。

土壌中の菌に負けた幼虫

これらの努力は、自然との調和を目指す有機農業ならではの方法です。化学農薬に頼らずに野菜を守るために、多くの知恵と工夫が活用されているのです。土壌中の菌が害虫を殺してくれます(福岡県の有機いちご畑で撮影)。

命の共存について

有機栽培の畑では、多様な生き物が共存しています。その光景は人の手が入らない森のような一つの生活圏です。農薬を使用しないことで見えてくる生き物がおたがいに影響し合って暮らす姿が見られます。スーパーに並ぶりんごには虫が食べたあとは見られませんが、有機りんごの圃場ではりんごを食べる虫がたくさん暮らしています。(青森県の有機りんご畑で撮影)

1、生態系のバランスと農薬の影響

あるいちご農家さんが語ってくれた話です。この農家さんでは農薬を50回から100回使用していました。「ハウスの中にこんなにたくさんの生き物がいることを農薬を使うのをやめたときに初めて気がついたんです。」

「いろんな生き物がいるのが自然というのは、普段感じてていることです。農協時代、アブラムシが一匹でも混入したら出荷停止と言われて徹夜でいちごの検品をしていたことがあります。あまりの大変さに農薬を撒くと、益虫が死に新たな害虫が発生する。

そのため農薬を撒くとさらに益虫が死に、害虫の発生速度がどんどん早くなるといった負のサイクルになったことがあります。とてもむなしく、愚かなことだと感じました。色んな虫や生物がいると害虫の一人勝ちを許しません。被害もほどほどで終わってしまうのです。」

化学農薬を使用していたときには見えなかった命が、農薬をやめたことで再び現れたのです。これは、農薬が益虫を含む多くの生物を駆除し、生態系を単調なものにしてしまうことを示しています。下の2枚は有機米の田んぼに暮らす虫です。(熊本県の有機田んぼで撮影)

2、害虫と益虫のバランス

自然界では、さまざまな生き物が互いに影響を与え合いながら生きています。例えば、害虫だけが増えすぎると農作物に大きな被害を与えますが、益虫がその害虫を抑制してくれることで被害が最小限に抑えられます。このように、多様な生物が存在する環境では、害虫の一人勝ちが起こりにくくなり、結果として畑全体が健康的な状態を保てるのです。

3、有機野菜に見る「命の循環」

有機野菜は、こうした自然界の命の循環をそのまま取り入れた形で育てられています。虫がついているということは、その野菜が多様な命に支えられた環境で育った証拠なのです。これは、農薬で作られた「人為的な環境」では得られない、自然本来の力を感じさせてくれるものです。

アブラムシに食べられただいこんのはっぱ。その片隅にはアブラムシを食べる虫が存在しています。(奈良県の有機圃場にて)

みなさまへのお願い、虫の混入をご理解ください

完全に虫がいない状態を作るためには、どうしても農薬の力が必要です。しかし、それでは「自然の恵み」を失ってしまいます。有機野菜は、農薬に頼らず、多くの生き物と共に育つからこそ、私たちに安心で安全な食材を届けてくれるのです。

多少の虫の混入については、「自然の一部」としてご理解いただければ幸いです。

まとめ:生命力あふれる有機野菜を楽しもう

有機野菜は、自然と共存する中で育まれた生命力の結晶です。その中に見られる虫の存在は、農薬を使わずに育てられた証とも言えます。

私たちは、生産者と協力しながら、できる限り丁寧に検品し、安心してお召し上がりいただける有機野菜をお届けしています。

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この記事を書いたひと

有機野菜のぶどうの木 高橋和子

三重大学農学部で農芸化学を専攻し。農薬化学や土壌肥料学を学ぶ。のちに農薬や化学肥料を使わない農業に取り組む人たちに出会い、農薬や化学肥料を使わない有機農業に心惹かれ、それ以来、有機農業に情熱を注いでいます。

有機農業の魅力を伝える一方で、農薬や化学肥料の利点についても理解を深めながら、情報発信を通じて皆さんに役立つ情報をお届けしたいと考えています。

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