
2025年5月28日、毎年恒例の有機小分け監査を受け、監査が終了しました。
これを機会にちょっとマジメに「有機栽培」についてお話しさせてください。でもご安心を。難しい話ではありませんよ。読み終わったときに、「へぇ〜、そんな仕組みがあるんだ!」と、ちょっとでも有機野菜に親しみを感じてもらえたら嬉しいです。
このページの目次
有機栽培=農薬不使用、では終わらない。
「有機栽培って、農薬を使わないことなんでしょ?」
もちろんそれも正解のひとつですが、実はそれだけでは「有機」とは名乗れないんです。
たとえば、農薬を使っていない野菜でも、保管の仕方や他の野菜との取り扱い方が定められた規則を守っていない場合だと「有機」として認められません。有機野菜が、農薬や化学物質にうっかり触れてしまうのを防ぐために、保管方法や袋詰め・仕分けのルールまで細かく決められているんです。
有機小分けを含むJAS有機の決まりはこちらでご確認いただけます。
有機表示について
有機食品のJASに適合した生産が行われていることを登録認証機関が検査し、その結果、認証された事業者のみが有機JASマークを貼ることができます。この「有機JASマーク」がない農産物、畜産物及び加工食品に、「有機」、「オーガニック」などの名称の表示や、これと紛らわしい表示を付すことは法律で禁止されています。
年に一度の「有機監査」でチェック!
じゃあ、誰がそれをチェックしているの?と思われた方へ。実は年に1回、認証機関による監査(チェック)が入ります。
「決められたルールどおりに、ちゃんと保管や仕分けがされているか」
「他の野菜と混ざったり、化学物質で汚染されるリスクがないか」
などを、認証機関がしっかり確認します。これは、消費者である皆さんに安心して手に取っていただくための、大切なプロセスです。
ぶどうの木を運営する株式会社東研では2025年5月28日に2024年度の監査がありました。いくつかその内容をご紹介しましょう。
2024年度監査の様子
最初に事務所内でいくつか質問がありました。そのうちの何点かをご紹介します。
- 有機農産物をどこから仕入れているか
- 有機農産物と非有機農産物の割合はどれくらいか
- 有機農産物と非有機農産物が混合しないように工夫しているところ
- 有機JASで発注したものが有機栽培でなかった場合はどうする
そのあと実際に格付けを行う場所に移動し、現場を確認します。
認証機関の監査内容もしっかりチェック!
2023年度の東研の監査には、認証機関である愛農会さんの監査を確認するためFAMIC(ファミック)さんの立ち合いがありました。認証機関が、きちんと仕事をしているかどうか確認している組織がFAMIC(ファミック)です。
FAMICは、認証の立ち合いのほか、認証機関の仕事のチェックのために、JASマークがついている商品を買い上げて、JASに定められている品質を満たしているかなども調べています。
FAMIC(ファミック)の詳細は下記をご確認ください。
*FAMIC(独立行政法人 農林水産消費安全技術センター)は、
科学的手法による検査・分析により、食の安全と
消費者の信頼の確保に技術で貢献することを使命とします。
有機監査を終わって思うこと -まとめ-
私たちは「有機野菜だけがすべて」とは考えていません。
農薬を使わずに育てた野菜がすばらしいのは確かですが、それだけが「良い野菜」だとは思っていません。
ただ、「有機栽培」と表示するためには、こんなにしっかりとした仕組みとルールがあるんだということ、そして私たち東研はそのルールを守り、皆さんに信頼していただけるよう努めているということを、知っていただきたいと思っています。
過去にも監査を受けています
過去の監査の様子はこちらから。
具体的な監査の内容
調査内容は毎年ほぼ同じです。(*)2018年に行われた監査から内容を引用します。
*法律が変わったり内部規定が変わったりする場合は変更があります。
調査内容は大きく分けて二つ。施設の検査と内部規程・各種記録台帳の照合 です。
1、施設の検査
保管状態、施設の清掃状態等を調べます。有機野菜と「有機ではない野菜」が混ざらないように保管されているか、保管場所はきれいに清掃されているか、JAS法で禁じられている殺虫剤や殺鼠剤などが使われていないかを調べます。
ぶどうの木では「有機でない野菜」は扱っていませんのでここは簡単にクリア。「有機」と「非有機」が混ざるのは果物のレモンとりんごだけ。レモンの在庫がありましたので、保管状況を確認していただきました。「有機レモン」と「特別栽培レモン」は混ざらないように保管されていることを確認していただき、合格。
お掃除もOKをいただきました。虫の混入予防には「ハエとり紙」を使用。ネズミ除けには超音波を使用していることを確認していただき、施設の検査は終了。
2、内部規程・各種記録台帳の照合
下の4項目について調査を受けます。
- 有機農産物の受入、小分け、計量、包装、格付・品質表示、出荷販売の手順の聞き取り
- 内部規程、格付表示規程、各種マニュアルの見直しの結果
- 規程に基づいた小分け・格付表示が誤りなく実施されたか
- 不合格品の処理および格付表示の管理に関する記録
入荷してきた有機農産物が矛盾なく出荷(販売)されているかどうかの確認です。例えば100㎏入荷した人参がどのように小分け(3㎏、5㎏、8㎏、10㎏、12㎏、14㎏)され、いつどれだけ出ていったかを確認するのです。
- 入荷の記録
- 小分け指示の記録
- 実際の小分けの記録(入荷した量を超えて小分けされていたらおかしい)
- JASマークの枚数管理(小分けした日に使われたJASシールの枚数を調べます)
- 出荷販売の確認(小分けした有機野菜がいつ出ていったかを確認
- 処分した農産物の確認(傷んだ有機野菜の量がどれだかあったかも確認します)
- 一年間全部の商品を確認するのは大変なので、いくつかの事例をピックアップして確認します。
以上 有機小分け業者の監査を受けました。(2018年) から引用
引用ここまで
最後に
普段何気なく見ている「有機」のラベル。その裏には、たくさんの確認や努力があります。
これからも、安心で誠実な野菜をお届けできるように、私たちは一つ一つのルールを大切に守りながら、有機野菜をお届けしていきます。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました!
以上 有機監査についてお話ししました。
この記事を書いたひと
有機野菜のぶどうの木 高橋和子
三重大学農学部で農芸化学を専攻、農薬化学や土壌肥料学を学ぶ。のちに農薬や化学肥料を使わない農業に取り組む人たちに出会い、農薬や化学肥料を使わない有機農業に心惹かれ、それ以来、有機農業に情熱を注いでいます。
有機農業の魅力を伝える一方で、農薬や化学肥料の利点についても理解を深めながら、情報発信を通じて皆さんに役立つ情報をお届けしたいと考えています。
自己紹介はこちらです。